Stoic Stabile



LSD-25 Synthesis from "Psychedelic Guide to the Preparation of the Eucharist": Preparatory arrangements: Starting material may be any lysergic acid derivative, from ergot on rye grain or from culture, or morning glory seeds or from synthetic sources. Preparation #1 uses any amide, or lysergic acid as starting material. Preparations #2 and #3 must start with lysergic acid only, prepared from the amides as follows: 10 g of any lysergic acid amide from various natural sources dissolved in 200 ml of methanolic KOH solution and the methanol removed immediately in vacuo. The residue is treated with 200 ml of an 8% aqueous solution of KOH and the mixture heated on a steam bath for one hour. A stream of nitrogen gas is passed through the flask during heating and the evolved NH3 gas may be titrated is HCl to follow the reaction.The alkaline solution is…

 港近くの倉庫街。
真っ赤な大きな月。
あたしと浅井とくたばった女。

 バカな事はもう辞めよう。LSDでトリップしたって、エニシダで心休めても、何にもならない。苦しいだけよ。苦しいだけよ。自作LSDなんて救いようが無い。
 内臓と脳漿と血液の雨の中で、キチガイのように笑う、あたし。
 性器から子宮にかけて、あたしはナイフを入れる。薬でラリってる女は、ナイフを見てもへらへらと笑っていた。あたし、レズビアンの気はないけど、ちょっとだけ欲情した。女の体に。きっと、金切り声みたいな断末魔をあげる女が醜くてそれに欲情したんだと思う。
今更、バタフライナイフなんて少しダサいけれど、これだけは譲れない。だって、いつだったか透明な存在を主張したクソガキへのオマージュなんだから。尊敬なんて、欠片もしていないけれど。クソみたいな社会の象徴。
 確りと研いでおいたナイフがよく切れない。脂に塗れてしまったのかしら…?
「骨にあたってるんだよ。きっと」
 横から、浅井が口を出した。
「黙っててよ。儀式なんだから」
「何の?馬鹿げてるよ。そんな事より、Lでもキメながらセックスしようよ。その方が楽しいぜ?何なら、死体と一緒でもいいよ。君がその方が、欲情するってんならね」
 俺はネクロの趣味は無いけど…。浅井はそう付け加えて、取り出した煙草の中身を少しだけほじくり返して、お茶っ葉みたいに細かくされたガンジャを詰めて火を点けた。そして、気持ち良さそうに吸う。
「塔子も吸う?」
「要らない。気持ち悪くなるもの」
「でも、大麻なら良いって?捕まっても知らねぇよ」
「捕まらないわ。だって、あたし数十人は人を殺したけど、今だここで新たな儀式を行ってる」
 あたしは、丁度、子宮より上の辺りを抉るナイフを引き抜いた。血液は殆ど出なかった。
ただ、真っ赤な月が血の滴るナイフに反射しただけ。それでも、黒いアスファルトには血液の水溜りが出来ていて、あたしの赤いハイヒールからは女の血液が滴っていた。
「ねえ、お腹が空いたわ」
「ねえ、セックスしようよ」
「あんたってそればっかりね」
「良いんだよ」
 そう言うと、浅井は薄い眼鏡を死体の上に投げ捨てて、あたしの首筋に手をかけた。そして、首筋にキス。強く吸う。痛い。
「噛んだ」
「痛いの、好きでしょ。塔子」
 そう言って、浅井はまたあたしの首筋を噛んだ。首筋から脳髄へ甘美な刺激が走る。痛いのは好き。でも、熱いのは嫌いよ。
「ねえ、縛って」
「縛るものが無いよ」
「女の髪を…」
 浅井は、あたしの持っていたナイフで女の長い髪を切った。
「気持ち悪いなあ。お前、絶対ネクロの気あるぜ」
 くるくると器用に髪の毛であたしの手首を縛る浅井の手を見ながら、真っ赤な月を見上げる。血が滴る今夜は最高の殺人夜だ。
「死体は好きよ。生きている人間よりも好きだわ。…違うわね…死ぬ寸前の人間が好きなのよ…」
 何かもどかしくて、あたしは、カリカリと爪を噛んだ。でも、そんなあたしなんてお構い無しに、浅井は、あたしの下半部に手を伸ばして、愛撫する。一番敏感なところを正確に捉える浅井の指は、ゆっくりと強く、僅かな痛みを与えるようにクリトリスを擽る。指がヴァギナを掻きまわす感覚。砕ける腰。あたしは崩れるように倉庫の扉にもたれかかる。
「浅…井…ん…っ」
「何?聞こえないよ、塔子」
 わざとらしく聞き返した浅井は、より激しく指を動かす。
「早く、終わら…て」
「何で?ダメだよ、まだイッてないし」
 そう言うと、浅井は自らのズボンのジッパーを下ろした。事のつまりあれだ、フェラチオをしてくれって事。
 まだ柔らかい、浅井のペニスに口を付けてキツク吸う。口に含むと、喉の奥が少しだけ苦しい。
「っ…塔子…」
「ねえ、手が使えないわ」
「良いよ、使わなくて…」
 浅井は、少しだけ苦しそうにあたしの頭を撫でた。あたしは、歯を立てる。苦痛に顔を歪めた浅井の顔は凄くセクシーだ。亀頭を舌先で舐めると、更に眉目に皺を寄せる。
 あたしの頬に、添えられた手。あたしは、唇を放して浅井の腹部にキスをする。倉庫に積まれた大きな木箱の上にうつ伏せに横たわるあたし。捲くられたスカート、腰を掴む手。そして、アナルを掻き回す指。飢えた獣みたいに激しい浅井のインサートは破壊的だ。縛られた手首のまま、あたしは木箱に手をつく。ヴァギナの奥深くまで浅井の硬く熱いペニスが侵食するように。アナルに挿入された指が前立腺を刺激して、体はオルガスムスに達しようとする。挿入された体のまま、あたしは仰向けになって、浅井の背中に手を回し、爪を立てた。浅井の唇と、あたしの唇が重なって、あたしは、背中を仰け反らせる。痙攣。
「塔子…っ」
「っ。浅…い」

 あたしは、月を見ながら赤ワインを壜のまま傾ける。もちろん、これは倉庫にあったもの。血液みたいだわ。
ナイフをあの女の胸に突き立てる。そして、さらに、子宮に向かって腹を切り裂く。
ぐちゅっ…と生々しい音。
「うわ…よく、そんな中に手を突っ込めるなぁ」
「まだ、体内は温かいわよ。ほら、腸。それに、心臓」
 あたしは、切り裂いた部分から腸と心臓を掴み出した。それを、月に掲げると、血液が腕を伝わり裸のあたしの乳房にまで伝わって、ぽたぽたと落下した。
「ねえ、何で人間を殺してはいけないか…解る?」
「そりゃあ……塔子は解るの?」
「ええ」
「何?」
 浅井は、特に興味も無い様子で、あたしの下半部にキスをしながら聞いた。体の奥がむずむずする。
 あたしは、たらたらと流れる血液を舐め上げる。鉄の味。
「人間は人間を食さないからよ」
「…じゃあ、何?塔子は人間を食うの?だから殺す?」
「違うわ。あたしは罪を犯しているのよ。…何なら、食べてみようか?意外と美味しいかもよ。彼女、若いし。まだ殺したばかりだから新鮮よ」
「止めろよ。俺ってば繊細だから、飯喰えんくなるし」
「それって、自分で言うものじゃないわよ」
 クリトリスを飴でも舐めるように舌先で転がす浅井を見下しながら、あたしはまるで儀式のように月に心臓を掲げる。ぽたぽたと滴る血液は、聖水だ。きっと浅井に言わせて見れば、彼の舐めている液体のほうが聖水だろうけれど。
「ねえ、次は誰を殺そうかしら」
「ねえ、塔子。地雷を作ったんだ。使ってみない?」
「何処に仕掛けるの?」
「永田町」
「何処?」
「国会議事堂」
「あたしはテロリストじゃあないわ」
「肉を割く感覚だけが死じゃあないんだ」
「あたし、銃とか嫌いよ。下品だもの」
「でも、君。持っているんだろう?」
「護身用よ」
「死んでもいいと思っているくせに」
 浅井は、クリトリスを噛んだ。官能。官能。官能。死体を切り裂くあの感覚に似ている。

 買ったばかりのMILKのピンクデニムワンピースとピンクのミュール。真っ黒だった髪を、シナモンピンクに染めた。そんな、あたしを見た、浅井は、少しだけ呆れたように溜息をついた。
「あんたさあ、今から何しに行くか知ってる?国会に爆弾仕掛けに行くんだぜ?何だよ、そのあからさまに捕まえてください、って格好は」
「可愛いでしょう?この色、結構気に入っているのよ」
 あたしは、ばっちり普段着な浅井の格好のほうに溜息を吐きたくなった。折角のイベントだって言うのに。どこで手に入れたのか、ファンでも無いくせにナンバーガールの黒いTシャツにジーパンを穿いた浅井は爆弾だの毒薬だのが入るこげ茶色の紙袋を持っていた。
「どうする?投げ込む?」
「近づけないからねえ。でも、あんたは血が見たいんだろう?」
「そうよ。テレビで見るんでもいいけどさ。あたし爆弾投げ込む事に興味ないし。国会議員が死んだって快楽なんて得られないもの」
「じゃあ、とりあえず、投げ込んで逃げるか。それからどっかの路地裏で女誘って3Pでも決め込もうぜ。今日はLを持ってるからさ」
 浅井は、ポケットをまさぐってクラフト紙に包まれたそれを見せた。
この男は、実に用意周到で、インターネットの某巨大掲示板サイトに犯行声明っぽいものをさっきネットカフェで書き込んできたらしい。あたしが何一つしなくても、彼はあたしの欲望というタダの行為を犯罪へと押しやってくれる。まあ、それさえもあたしにはどうだって良いのだけれど。

『今日、午後四時三十八分頃、国会議事堂に爆弾とサリン等の毒物が投げ込まれるという事件が発生しました。この事件による死傷者は数十名にものぼり、死者は三名、重傷者三十名、軽傷者二十名………警視庁は、永田町内の警備体制を厳重にすると共に目撃者から事情を聞いて犯人の特定を急いでいます。しかし、犯人の手掛かりはいまだ見つからず………内閣総理大臣は、今回の事件に基づき”許されざるべき国家への反逆”と今回の事件を国家体制に向けられた反抗的犯罪と断定……インターネット上のある掲示板サイトでは、犯行声明文と見られる書き込みが話題となっており、警視庁では多方面での捜査を行っていく見通し……本日は、この後、予定されていたドラマを中止して、この事件について特別番組を………』

 その夜、あたしはラブホテルでテレビニュースを見ながら浅井とLをキメてセックスをした。何だか疲れてしまったあたしは、今日は直接手を下す殺人を休日にした。それでなくてもたくさんの人が死んだのだから。
 パソコンを持ち込んでいる浅井は、全く他人の顔をして、犯行声明文についての書き込みを話題のサイトの掲示板にしていた。
 血を浴びれなかった、今日のあたしと浅井のセックスはいつもより激しくて、浅井の腕があたしのアナルに入った。痔になってしまうんじゃあないかと、少しだけ心配だ。あたしは、腕を入れるのは憚られたので、バイブを浅井のアナルに突っ込んだ。いつもよりキツク、ペニスを握ると、浅井は眉間に皺を寄せてやっぱりセクシーな顔をした。
最後は、あたしを縛ってボコボコした太いバイブをあたしのヴァギナに突っ込んで、アナルにインサートして二人で果てた。

「ねえ、今日は誰を殺そうか」
「それより、クラックを手に入れたんだ。どう?やってみない?」
「それでセックス?」
「塔子だって殺人の話ばっかりじゃん」
「いいじゃない。それより、あの女の乳房を切り落としてみない?」
 あたしは、駅前の大きなテレビに映る巨乳な女優を見上げる。
「シリコンっぽいよ」
「巨乳好きでしょう?やってみたくない?女優」
「それはどっち?」
「どっち?」
「KILL or SEX」
「両方よ」

 あたしたちに怖いものなんて何も無い。誰もあたしたちを裁かない。違う、裁けないんだ。だって、あたしたちは聡明だもの。
 欲望が、どんなものかってことを知っているし、肉を切り裂く感覚がどれほどの官能を呼び起こすか熟知している。あたしたちは史上最大の快楽殺人者だ。文字であらわすとヒドク陳腐。
 切り裂きジャックなんて、目じゃないわ。毒だって使える。爆薬だって、麻薬だって、何だって使える。
 体を使って生き抜く術を知っている。スカトロだってSMプレイだって出来る。
あたしたちは、テロリストでもアナーキストでもキリストでもない。あたしたちはあたしたちだ。

 だって、欲望がサッカリンよりも甘いってこと、熟知しているもの。

 あたしは浅井の精液を飲み干しながら知らない誰かの腹を切り裂いた。



end